晩霜の被害はなかなか予知しずらいものです。
しかも極めて局地性があり、同じ町内でも、東の谷ではやられたが、西の谷では大丈夫ということも普通に起こります。
また、作物の種類や品種によっても、感受性が違うので、なかなか対策も難しいものです。
晩霜の被害をどのように予見し、どんな対策をとればいいか、解説します。
霜の起きやすい条件とは
気象条件
以下は霜はなぜ降りるか、説明した別稿と同じ文章です。
冬から春にかけて、日本付近では西高東低の冬型気圧配置が徐々に緩んできます。
すると、中国大陸でできた移動性高気圧や東シナ海でできた温帯低気圧が、西から交互にやってきて、天気は周期的に変わるようになります。
このような状況で、日本の上空を移動性高気圧が覆うことがよく起こります。
移動性高気圧に覆われ、昼は暖かく夜は寒いような条件が、晩霜の直接的な原因となります。
霜の発生しやすい場所
霜の発生しやすい条件としては以下のことが挙げられます。
1 空気が滞留しやすい盆地や谷であること
2 湿度が低いこと(大きな川などから水蒸気が供給されると霧になりやすい)
3 夜間の風が弱いこと
特に谷の出口が狭く、中が広がっているような小盆地状の地形での発生が多いといわれています。
霜注意報とは
主要都市での発表条件
晩霜の季節になると、気象台はある条件になれば、霜注意報を出します。
霜注意報は、各県の気象条件や主作物をにらみながら、各地方気象台が独自に基準を設けて発表をします。
管区気象台のあるような各ブロックの中心都市での霜注意報の発表条件は以下のとおりです。
都市名 | 発表開始日 | 発表基準(最低気温) | 備考 |
札幌 | - | 3℃以下 | - |
仙台 | - | 2℃以下 | 早霜でも発表 |
東京 | - | 2℃以下 | 晩霜のみ |
大阪 | 4月15日以降 | 4℃以下 | 晩霜のみ |
福岡 | 3月15日以降 | 3℃以下 | 早霜でも発表 |
鹿児島 | 3月10日以降 | 4℃以下 | 早霜でも発表 |
関西地方ではどうなっているか
全国では、ある程度発表基準が違うことは理解できます。
ところが、比較的条件が近いと思われる関西の2府4県の気象台所在地を見てみると、これでも結構バラバラです。
特にお茶の山地がある滋賀と奈良では基準温度が設定されず、京都では発表開始日が設定されていません。
これはある程度柔軟性を持たせたいという気象台の判断かと思われます。
どうやら霜というのは気温だけで予想するのがかなり難しく、各気象台ともそれぞれの県の実態に合わせて注意報を発表しているのではないかと思われます。
都市名 | 発表開始日 | 発表基準(最低温度) | 備考 |
彦根 | 4月1日以降 | - | |
京都 | - | 3℃以下 | |
大阪 | 4月15日以降 | 4℃以下 | |
神戸 | 4月1日以降 | 4℃以下 | 姫路、豊岡2℃以下 |
奈良 | 4月1日以降 | - | |
和歌山 | 3月20日以降 | 3℃以下 |
柔軟に発表される霜注意報
2023年は2月の後半から比較的高温が続いていました。
そのため、晩霜の発生も、いつもの年よりも早めから警戒する必要があります・
実際、3月1日以降、温暖な県(鹿児島、和歌山など)で霜注意報が出されており、公表されている発表基準日より早い発表となっています。
もともと注意報は、災害の発生が予想されるときに出されるものですので、早く暖かくなりそうな年には、柔軟に時期を早めて霜注意報を発表するようです。
霜注意報をどう活用するか
過去に晩霜害の被害を受けたところでは
以上のように、各気象台はそれぞれの気温予報を前提に霜注意報を発表しますが、〇〇市の××地区といった狭いエリアを対象にした霜注意報の発表は、今の予報技術ではなかなか難しいと想像されます。
では霜注意報をどう活用するか、考えてみます。
基本的には霜注意報は気温だけが発表条件のように見えますが、実は晩霜の季節にこの気温になるということは、霜の発生する条件はそろっていると考えたほうが良いです。
とくに、過去に晩霜害の被害を受けたところでは、何らかの対策をとる必要があるといえるでしょう。
これまでに被害があったかどうかわからない場合
以下に述べる方法は簡便なやり方ですが、実際の気象の予報はこんなに単純なものではありません。
この方法に取り組む場合は、あくまで自己責任でお願いします。
活用したい〇〇市にアメダスポイントがあれば、過去5年程度の4月の最低気温と、同じ日の気象台所在地の最低気温を比べてみます(日最低気温が5度以下の場合だけでOK)。
その結果、〇〇市の日最低気温が気象台所在地の最低気温より、おおよそ1℃低いということが分かったとします。
そうなれば、霜注意報の出た〇〇市のあすの最低気温は、気象台所在地の予想最低気温より1℃程度低いと予想できます。
ここで安全を見て、気象台予想気温より1℃低いというデータであれば、最悪のケースとして2℃余裕を見て、3℃低ければどうなるかを考えてください。
3℃低くなれば、0℃以下になるというのであれば、すぐに対策を考える必要があります。
3℃低くなっても、〇〇市が3℃だというのであれば、とりあえず対策は見送ってもいいかと思います。
晩霜の被害を防ぐためには
対流を起こす
晩霜はほとんどの場合放射冷却が原因となります。
盆地や谷間で放射冷却が発生するときは、逆転層といって、上空のほうが暖かく、地表が冷たい空気の層ができています。
そのため、上の空気と下の空気を入れ換えることができれば、霜を防ぐことができます。
具体的には、関西の茶畑でよく見かける防霜ファンがあります。
これは、茶畑に電信柱のような柱を立て、その上部に扇風機を取り付け、風を送るというものです。
この風によって、逆転層の空気をかき混ぜ、地表の低温層をできなくしようというものです。
そのほか、ミルク缶に灯油を入れて燃やす方法や、市販の防霜資材(木粉と油脂を混ぜたもの)を燃やす方法など、暖めて上昇気流を起こす方法もあります。
散水による方法
散水は逆効果のように思われがちですが、散水した水が凍るときに熱が放出されるために、結果的に新芽などを0℃前後に保つ効果があります。
但し、水がふんだんにあること、湿害が起こりにくいところに限定されることなどが条件となります。
被覆資材を使う方法
果樹園などで用いられる多目的防災網があれば、0.5~1℃程度の昇温効果が期待できます。
また、茶畑などでも被覆資材を用いることもあるようです。
しかし、いずれの場合もサイドは閉じずに開けて冷気を逃がすことが必要です。
まとめ
以上、遅霜の対策についてまとめました。
まずは、天気予報や気象台の出す霜注意報を確認し、確実な対策をとってください。
霜の起こりやすい時期や天候については、こちらもご覧ください。
但し、霜は予報の難しい現象の一つですので、自分の畑ではどんなことが起こるか、日頃から気温をとったり、観察を怠らないことが大切です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。