バレンタイン豪雪をはじめ、これまで大雪でハウスが倒壊し、大きな被害が発生したことがあります。
大雪を防ぐことはできませんが、事前に察知し、対策を行うことができれば、被害を軽減することが可能です。
大雪の情報をどのように知るか、大雪の恐れのある時、ハウス栽培ではどのような対策が必要か。
ハウスの倒壊を防ぐための対策を、事前、降雪中、積雪後のそれぞれについて解説します。
大雪はどのようなときに降るのか
みなさんは、自分のハウスのある所で大雪が降るのは、どのような気圧配置のときかご存知ですか。
国内で大雪を降らせるのは、主に次の2つの場合です。
1 冬型気圧配置(西高東低)による大雪
2 南岸低気圧による太平洋側の大雪
ここでは、毎年積雪があるような地域は除き、太平洋側の平地で大雪となる場合を解説します。
西高東低で大雪が降るのはどんなときか
西高東低で大雪が降る理由
西高東低の気圧配置は、日本の冬にはふつうにみられるものです。
太平洋側では乾燥した晴天が続くか、北風が入り込んで曇り空から雪が舞うことがあっても、積雪には至りません。
これは冬型による筋状の雲は分水嶺の山地を超えられず、日本海にすべて水分(雪)を落としてしまうからです。
ただ、冬型の気圧配置が強まり、特に、JPCZができると、事情は異なります。
通常の筋状の雲とは異なる背の高い雲ができ、分水嶺の山地を超えて、瀬戸内や濃尾平野に入ってくることがあり、大雪をもたらします。
冬型気圧配置でもJPCZが伴うと、広島、名古屋などで20cm以上の積雪を記録したことがあります。
西高東低で大雪を察知するには
西高東低の気圧配置で太平洋側で大雪が降るのを、天気予報でどのように察知すればいいでしょうか。
1 天気図で西高東低の状態か、等圧線が「立っている」状態か確認する。
2 天気予報の解説で、JPCZができそうとか、できているという説明がある。
(JPCZができなくても風向きによって大雪の可能性はゼロではない)
3 農園のある地域(○○県南部など)に大雪注意報が出ているか、大雪の予想が出ている
4 農園のある地域で雪による交通障害について気をつけるよう呼び掛けている
以上の4点のうち、少なくとも2点以上が該当すれば、大雪の可能性はあると判断できます。
南岸低気圧で大雪が降るのはどんなときか
南岸低気圧で大雪が降る理由
南岸低気圧については、様々な要因が重なって大雪となります。
詳しくはこちらをご覧ください。
南岸低気圧の大雪を察知するには
南岸低気圧の気圧配置で太平洋側で大雪が降るのを、天気予報でどのように察知すればいいでしょうか。
1.天気図で東シナ海や九州・四国の太平洋側に前線を伴う低気圧がある。
2.天気予報の解説で、南岸低気圧による雪の恐れについて説明がある。
3.農園のある地域を含め太平洋側に広く大雪注意報が出ているか、大雪の予想が出ている
4.農園のある地域で雪による交通障害について気をつけるよう呼び掛けている
以上の4点のうち、少なくとも2点以上が該当すれば、大雪の可能性はあると判断できます。
ハウスを大雪から守るためにはどうすればいいか
事前の対策
大雪が降ることが予想されるときは、事前に十分なハウスの点検、補強を行います。特に以下の点に注意しましょう。
〇パイプのさび(さび止めを塗る)
〇ブレースや筋交いのゆるみの点検、増し締め
〇連棟ハウスでは谷からの浸水防止対策の実施(フィルムの二重張りなど)
〇中柱、つっかえ棒、ワイヤー等でハウスを補強
また、電気設備の防水対策、暖房施設への給油や排気ダクトが雪に埋まらないように対策を行うことも重要です。
融雪時の排水対応がうまくいかないと、いろいろな障害につながるので、ハウスの周りに排水路を掘ることも大切です。
各県が対策をまとめていますが、私の見た中で一番わかりやすい、栃木県の資料を下記に示しました。
降雪対策について、チェックリストをまとめましたので、下記もご覧ください。
降雪中の対応
降雪中については、作業する人の安全に十分注意を払うとともに、以下のような対応を臨機応変に行ってください。
○加温できる場合は、施設内の温度を高め、積雪の自動落下を促進する。
○必要に応じ、雪下ろしや施設周辺の除雪を行う
○暖房機の吸排気口が雪でつまらないよう、重点的に除雪する
○融雪のための散水は絶対に行わない(雪が重くなり倒壊の危険が著しく高まる)
降雪後の対応
降雪後についても、対応を誤ると施設や作物に被害を与えることがあります。以下の点にご注意ください。
○ハウス周辺の雪を除去する(融けるまで待っているとハウスに冷気や冷水が入りやすい)
○単棟ハウスではサイドの除雪を速やかに行う(サイド巻き上げが作動できるよう)
○ビニールの破れやハウスの損傷、電気設備等の点検を行う。
○ハウスの一部が損傷した時は、補修を行うとともに、作物の保温に努める(トンネルやべた掛けの活用)
降雪後、急に晴れた時は、高温障害が出ることがあるので、換気に努め、必要に応じて遮光する(特に3月の大雪の場合)。
ぶどうの波状型ハウスの大雪対策
大阪などで多いぶどうの波状型ハウスは、斜面の形状により形が違い、雪が滑り落ちると一カ所に荷重が集中するなど、雪に弱い構造となっています。
降雪が予想される場合は、加温ハウスでは、雪の降り始めにポリダクトの先を内張りフィルムの上に上げ、融雪を促すことが可能です。
また、積雪が多いときは、ビニールを開いて雪を園内にかき下ろし、直ちにハウスを閉めて保温することで、新梢への被害を最小限にする方法も考えられます。
但し、収量の低下などに結びつくので、最後の手段とお考えください。
まとめ
防災対策は、先手をとって準備する事が大切で、そのためには農園タイムラインを作っておきましょう。
農園タイムラインはこちらをご覧ください。
雪害対策は、事前の準備がものをいいます。これを参考に、大雪から大事なハウスを守っていただき、被害が少しでも小さくてすめば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。