太平洋側の地方に大雪をもたらす南岸低気圧とはどのようなものでしょうか。
数年に一度、関東や関西など普段雪の降らないところに大雪が降り、ビニルハウスの倒壊など大きな被害を出す、農業上の大きな脅威です。
太平洋側の大雪を事前に知る方法や大雪を降らせるメカニズムなど、南岸低気圧について解説します。
南岸低気圧の被害とは
2014年のバレンタイン豪雪
南岸低気圧による農業被害で記憶に新しいのは、2014年(平成26年)2月のバレンタイン豪雪でしょう。
関東地方を中心に積雪があり、甲府で1m超え、前橋や熊谷で50cm超え、東京でも30cm前後の積雪となりました。
Wikipediaによれば、大雪でビニールハウスの倒壊などが相次ぎました。
山梨県ではブドウハウスの8割が被災、群馬県や埼玉県では200億円を超える被害(速報値)が出たとのことです。
1995年の関西地方の大雪
関西地方でも1995年1月31日~2月1日にかけて、南岸低気圧による積雪があり、こちらもハウス倒壊の大きな被害が出ました。
31日夕方から降り出した雪は深夜に一度やみましたが、明け方から再度降雪が続きました。
水分の多い重い雪がブドウハウスを襲いました。
ハウスの倒壊から棚の倒壊やブドウの折損、抜根などが連鎖し、大阪府では30億円を超える被害となりました。
天気図での南岸低気圧
それでは、天気図で南岸低気圧を見てみましょう。天気図の見方はこちら。
東シナ海周辺で発生した低気圧が、日本の南岸の太平洋を北東~東北東に進むコースを発達しながら進むことは、年中起こります。
上に示した天気図では、四国沖の前線を伴った低気圧が南岸低気圧と呼べるコースをとっています。
冬期にこのコースを通るとき、あとで述べる様々な条件が重なると、太平洋側が雨にならずに雪になります。
この解説では、雪を降らせた(または雪を降らせる可能性のある)低気圧を南岸低気圧として扱います。
大雪が降る条件
雪が降る一般的な条件
太平洋側に南岸低気圧が大雪を降らせるには、いくつかの条件が重なることが必要です。
一般に雪が降るには次の条件が必要だといわれています。
条件1 上空に雨雲があること(雲が薄いと雪は舞っても積雪にはつながりにくい)
条件2 上空約1500m(850hPa)の気温が-3~-6℃以下であること
条件3 地表の温度が0℃以下か、0℃以上なら湿度が低いほど高温でも雪となる。
南岸低気圧で大雪となる条件
では、南岸低気圧について、積雪の条件を検証してみましょう。
条件1について、東シナ海で発生して発達中の低気圧は、雨雲を伴っているのが普通ですので、この条件にあてはまります。
条件2については、冬に1500mで-3℃以上になることは太平洋側ではよくあります。
従って、これが大雪を降らせるかどうかの、一つの目安となります。
条件3については、太平洋側で気温が0℃以下になることは少なく、一つの目安となりますが、5℃以下なら注意は必要で、被害を出すこともあります。
バレンタイン豪雪、関西の大雪の2つのパターンは東京、大阪の気温が0℃前後で推移したパターンです。
0℃以上で雪が降ると、湿った雪となり、雪の重みが増して大きな被害につながることが多いです。
低気圧のコースに注意
南岸低気圧で大雪になるときに、もう一つ注意しなければいけないのは低気圧の通るコースです。
関東では低気圧が八丈島より北を通ると被害が出る雪になるといわれています。
関西では距離についてあまり記載したものは見当たりません。
が、八丈島と東京の距離から考えれば、潮岬をかすめるようならかなり危ないといえそうです。
南岸低気圧の大雪をどう予知するか
このように大きな被害を出す南岸低気圧ですが、実は予報の難しい現象です。
低気圧の発達と雨雲の発生の予想はできても、上空や地表の微妙な気温の差、低気圧の通るルートの微妙な違いで、大雪とただの雨の差ができてしまいます。
気象庁が予想が難しい現象として、バレンタイン豪雪を紹介するほど難しい現象です。
注意しておいてほしいのは次のようなことです。
○冬、東シナ海南部に前線を伴うような発達中の低気圧がある。
○日頃大雪のない太平洋側で広い範囲で大雪注意報が出ているか、出そうだといっている。
○天気予報の解説で、「南岸低気圧」、「太平洋側で大雪の恐れ」という言葉が出る。
暖冬の年でも南岸低気圧の大雪は起こります。日頃から天気予報には注意しましょう。
南岸低気圧のまとめ
南岸低気圧は太平洋側に大雪をもたらす危険な気象現象で、農業、特にハウスに甚大な災害を与えます。
南岸低気圧が大雪を降らせる条件は複雑で、予報の難しい現象です。
早めの対応が必要なので、常に天気予報には注意しておきましょう。
天気図の見方はこちら。
最後まで読んでいただきありがとうございました。