2023年は、梅雨明け前後から、連日「熱中症に注意」を呼びかける猛暑となりました。
気候変動の影響なのか、35℃を超える猛暑日が全国各地で記録され、7月25日には北海道の帯広でも最高気温35.5℃となりました。
このような夏の高温はどのような気象メカニズムで発生するのか。
暑さ指数や熱中症警戒アラートとはどのようなものか。どのような場合に注意が必要なのか。
熱中症と気象の関係について解説します。
なお、熱中症の症状や予防策等、人の健康に関する部分についてはこちらで解説していますので、併せてご覧ください。
なぜ夏は暑いのか
太平洋高気圧とは
ここでは、便宜上梅雨明け以降の天気について説明します。
この時期、日本付近は太平洋に中心を持つ「太平洋高気圧」あるいは「小笠原高気圧」と呼ばれる高気圧に覆われます(天気図参照)。
この天気図では日本列島は、ほぼ関東の東に中心を持つ高気圧に覆われています
さらによく見ると、天気図には表示されていませんが、この高気圧の本当の中心は、画面の東にはみ出した東経170度以東にあり、巨大な高気圧であることがわかります。
この高気圧は、地球全体の大きな大気の流れの中でできる「亜熱帯高気圧」と呼ばれるものです。
ハドレー循環とは
では、亜熱帯高気圧はなぜできるのでしょうか。
亜熱帯高気圧よりもっと南の赤道付近では、日射が強いために高温になり、空気が軽くなって、上昇気流が起こります。
気温が高いですから、たくさんの水蒸気も一緒に上昇し、雲となって赤道付近に大量の雨をもたらします。
これが熱帯雨林を作る赤道付近の多雨の原因です。
降水をもたらした上昇気流は、上空で方向を両極の方向へ変え、上空を移動していきます。
北緯30度付近に達すると、この空気は下降し、高気圧となるのです。
赤道付近で空気が上昇し、中緯度付近で下降するという流れは、地球規模でおこっており、これをハドレー循環と呼んでいます。
太平洋高気圧は、地球規模の大気の動きであるハドレー循環により作られた、大きな高気圧なのです。
地球全体の空気の流れを示した図(ウィキペディアより)もご覧ください。
太平洋高気圧が暑い理由
このように太平洋高気圧は、ハドレー循環に伴う下降気流によって作られるため、断熱圧縮によって、空気が暖められています。
こうした下降気流は、基本的に乾いているので、大陸にこうした高気圧ができると、この部分は高温乾燥になり、砂漠化してしまいます。
サハラ砂漠やアラビアの砂漠地帯はこうした原因で砂漠となっているのです。
しかしながら、太平洋の真ん中でこのような下降気流が起きると、高気圧から周辺に吹き出すときに、暖流の流れる温かい太平洋上を通ることで、水蒸気が供給され、温暖湿潤な空気となります。
また、高気圧の勢力圏では、上昇気流が起きにくく、雲もできにくいため、直接地表に日射が到達することで、さらに気温を上げる要因となります。
これらのことから、太平洋高気圧に覆われた時には、高温多湿となるのです。
熱中症にかかる数的指標
暑さ指数とは何か
暑さ指数(WBGT)とは、熱中症に関係のある①気温、②湿度、及び日射をはじめ地面、建物など周辺の③輻射熱を勘案し数値化したものです。
具体的には、下の表をご覧ください。
名称 | 関連する気象現象 | 重み(指数で重視される割合) |
乾球温度 | 気温 | 1 |
湿球温度 | 湿度 | 7 |
黒球温度 | 日光が当たった状態での体感温度 | 2 |
それぞれの数値を熱中症になりやすさなどを勘案した比率をかけて出した値のことで、環境省などの公表の際には、単位なしの指数として表示されることが多いです。
同じ気温(乾球温度)では、湿球温度は湿度が高いと高くなり、湿度が低いと低くなります。
また、黒球温度は日射量や地面・建物などからの放射熱が多いと、高くなります。
暑さ指数は、熱中症の患者発生数と関連性が高く、28以上になると急に患者の発生が増えることが知られています。
環境省では、28以上を厳重警戒、31以上を危険として、暑さ指数をもとに、野外での運動や活動の際に参考にするよう呼び掛けています。
具体の行動制限については、環境省HP(こちら)をご覧ください。
また、暑さ指数には実況値(実際に観測した値)と予報値がありますが、予報値の基礎となるデータは、気象庁の気温などの予報値をもとに計算されています。
各府県別の暑さ指数の実況値と予測値については、環境省のHP(こちら)をご覧ください。
熱中症警戒アラートとは
2021年から、気象庁が環境省と共同で熱中症警戒アラートを発表するようになりました。
熱中症警戒アラートは、前日の17時ごろまたは当日の5時ごろに、最新の気温等の予測をもとに、府県予報区(北海道、鹿児島県、沖縄県は細分化)を単位として発表されます。
発表基準は、発表地域内の暑さ指数算出地点のいずれかで、日最高暑さ指数33以上を予測した場合とされています。
熱中症警戒アラートは、4月の第4水曜日から10月の第4水曜日までの期間が発表期間となっています。
実際に発表された2023年7月30日の全国の熱中症警戒アラート発生府県は以下のようになっています。
このとき、大阪府に発表された熱中症警戒アラートの解説文は以下の通りです(一部省略)。
大阪府では、今日(30日)は、熱中症の危険性が極めて高い気象状況になることが予測されます。外出はなるべく避け、室内をエアコン等で涼しい環境にして過ごしてください。 また、特別の場合*以外は、運動は行わないようにしてください。身近な場所での暑さ指数を確認していただき、熱中症予防のための行動をとってください。(中略) [今日(30日)予測される日最高暑さ指数(WBGT)] 能勢30、枚方32、大阪32、生駒山28、堺33、熊取31 全国の代表地点(約840地点)の暑さ指数は、熱中症予防情報サイト(環境省)にて確認できます。個々の地点の暑さ指数は、環境によって大きく異なりますので、独自に測定していただくことをお勧めします。(以下略) |
気象庁が発表している熱中症警戒アラートについては、こちらをご覧ください。
まとめ
熱中症の原因となる夏の暑さはなぜ起こるか、また、熱中症の予測指数である暑さ指数と、熱中症警戒アラートについて、解説しました。
熱中症については、しっかり予防をすること、即ち熱中症をおこすような場所、時間に活動せず、涼しいところで過ごすことが大切です。
この記事を参考に、熱中症に十分警戒しながら、暑い夏を乗り切ってください。
熱中症とはどんな症状か、予防や応急対策についてはこちらをご覧ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。