線状降水帯~2023年6月の事例

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気象の基礎知識
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 集中豪雨が報道されるとき、最近よく出てくるのが、「線状降水帯」という言葉です。

 同じ地域に長時間、大量に雨を降らせ、土砂災害や河川の増水、洪水などをもたらし、時にはライフラインや交通機関も寸断して、大きな災害につながります。

 しかし、言葉をよく聞くわりには、その発生メカニズムの解析や、発生前の予報については、他のシビアウェザー(例えば台風)に比べると、まだまだ発展途上の段階です。

 ここでは、2023年6月2日の事例を紹介するとともに、線状降水帯について解説します。

線状降水帯の発生メカニズム

線状降水帯の発生メカニズム(気象庁HPより)
線状降水帯の発生メカニズム(気象庁)

 イラストは線状降水帯の発生事例と発生メカニズムの模式図です。

 左図は線状降水帯の発生事例の解析雨量(3時間積算)です。

 メカニズムについては、右図をご覧ください。

 線状降水帯は、地表付近の低い層に暖かく湿った空気が流入するところから始まります。

 こうした空気が、別の風向きの空気とぶつかる(前線での発生)場合や、山岳にぶつかる場合(地形による発生)に、上昇気流となって雲が発生します。

 このとき、上空に寒気が入るなどして、大気の状態が不安定な時には、こうした暖気が発達した積乱雲となります。

 こうした積乱雲は、雨を降らせながら上空の強い風で流され、消滅していきますが、次々と新しい暖湿気が流れ込むので、積乱雲は列をなしながら、同じところへ次々と雨を降らせ、結果的に集中豪雨となります。

 これが線状降水帯の姿だといわれています。

 気象庁では、線状降水帯は、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞し、長さ50~300km程度、幅20~50km程度の雨域をいうとしています。

 ただ、線状降水帯の発生メカニズムは未解明な点も多く、現在も継続的に研究が続けられています。

線状降水帯の発生事例(2023年6月2日)

天気図

2023年6月2日15時の天気図(気象庁)

 線状降水帯が出たと気象庁が発表した2023年6月2日の天気図です。

 この年は、近畿地方では5月29日に梅雨入りし、それ以降連日雨が続き、一時猛烈な強さとなっていた台風2号がいよいよ接近してくるという状況でした。

 この天気図は15時時点のもので、近畿南部で線状降水帯が発生しており、関東や東海では今後線状降水帯が発生し、翌日にかけて大雨が予想され、警戒が続いていた時点のものです。

 この時点では台風の周りをまわる南寄りの湿った風が前線に向かって吹きつけており、前線で収束するとともに、紀伊山地や静岡・愛知県の北側の山地によって上昇気流となり、積乱雲が続けて発生しやすい条件となっていました。

雨の状況

 6月2日から3日にかけて、四国南部、近畿南部、東海、関東にかけて、大雨が降りました。

 こうした地域の多くのアメダスポイントで、6月の24時間降水量の記録を塗り替える降水を観測し、梅雨入り直後(関東は梅雨入り前)としては珍しい大雨となりました。

 土砂災害や増水した河川に流されるなどで、複数の犠牲者が出たのをはじめ、東海道新幹線が東京~名古屋間で運休となったほか、関西でも大和川が増水した影響などで、JR大和路線や阪和線、南海線などがストップ、高知県でも土佐くろしお鉄道中村線で車両が土砂に乗り上げ脱線事故が発生しました。

「顕著な大雨に関する情報」の発表状況

 この一連の大雨について、気象庁では「顕著な大雨に関する情報」第1号~第8号を出しました。

「顕著な大雨に関する情報」は以下のようなものです。

〇〇県では、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いています。命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっています。
「顕著な大雨に関する情報」の説明文

下表にその発表時間と対象県を示します。

顕著な大雨に関する情報番号発表された府県名発表時刻(6月2日)
第1号高知8:10
第2号高知11:22
第3号和歌山12:10
第4号奈良、和歌山13:10
第5号三重15:40
第6号愛知、三重15:51
第7号静岡、愛知16:10
第8号静岡、愛知19:15
6月2日の顕著な大雨に関する情報の発表府県と時刻

 このように、この日は午前に高知県で線状降水帯が確認されて以降、正午ごろに和歌山県、続いて奈良県で確認され、15時以降、三重、愛知、静岡と続き、20時ごろまで線状降水帯による大雨となったのでした。

 関東では線状降水帯は出現していないことになっていますが、気象庁の「気象情報」では、関東地方で2日から3日にかけて線状降水帯が出現する可能性があると言及されていました

 実際、埼玉県や茨城県などで、車が流されるほどの浸水(洪水?)も発生していました。

まとめ

 この事例については、まだ気象庁からの「災害をもたらした事例」としての発表が(速報も含めて)ないので、本稿はあくまで私個人としての整理です。

 現在、大阪管区気象台がまとめた気象速報(ほぼデータ集に近い)が公表されていますので、こちらも参考にしてください。

 いずれにしても、線状降水帯は日本の集中豪雨災害の中で重要な要因であり、これからも一層の分析と評価、また予知と防災につなげていくことが求められており、気象庁でも様々な取り組みを行っています。

 線状降水帯の予知については、別稿でまとめますので、今しばらくお待ちください。

 気象情報についてはこちら、大雨警報についてはこちら、土砂災害警戒情報についてはこちら、洪水警報についてはこちらも、それぞれ併せてご覧ください。

 最後まで読んでくださりありがとうございました。

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