台風の基礎知識

スポンサーリンク
気象の基礎知識
この記事は約7分で読めます。
スポンサーリンク

 台風は強風、大雨、高潮など、多くの災害の原因となる気象現象です。

 しかし、進路をある程度予想できるようになったことから、他の災害に比べて早目に備えることができます。

 2020年までの30年で、台風は毎年約25個が発生し、日本から300km以内に近づくものが約12個、上陸するものが約3個ということです(気象庁HP)。

 台風は南の海上で発生し、北上して日本に上陸すること、北上するとともに発達し、日本に近づくと徐々に弱まりますが、暴風と大雨、さらに高波、高潮、時にはフェーン現象などで、大きな被害を与えることはよくご存じでしょう。

 台風はどこでどのように発生するのか。

 台風はどのようなコースをたどって日本に接近するのか。

 台風の大きさや強さはどのように決めるのか。

 日本接近後はどのようになるのか。

 台風に関する基礎的な知識について、解説します

 最新の台風情報は気象庁防災情報をご覧ください。

 なお、気象庁の台風情報の見方についてはこちら、農作物の大雨対策はこちら、ハウスの強風対策はこちらもご覧ください。

台風の発生と発達

2023年台風2号のひまわり画像
2023年台風2号のひまわり画像

 日本に接近・上陸する台風の多くは、赤道のやや北の北緯10~25度の太平洋上で発生します。

 この付近は海水温が高く、湿った上昇気流が発生しやすい条件にあります。

 こうした上昇気流が積乱雲を作ると、その時に熱が放出され、そのエネルギーで新たな雲ができるという循環が起こり、台風はどんどん発達し、強い低気圧となります。

 台風は地球の自転の影響で、北半球では反時計回りの渦となり、中心付近には「台風の目」と呼ばれる、風が弱く雲のない部分ができます。

 画像は、2023年台風2号の5月24日時点の気象衛星ひまわりの写真です。

 この台風は、フィリピン沖で「猛烈な」強さにまで発達し、写真のような強力な渦となって、台風の目もはっきりしています。

 一般に、台風が発達すると台風の目がはっきりするようになるので、台風の目は台風の強さの目安として説明されることも多いです。

台風の進路

月別の台風の進路(気象庁HP)
月別の台風の進路(気象庁HP)

 図は時期別の台風の進路を示した模式図です。

 発生してしばらくは、台風は太平洋上を西向きに進むことが多く、夏まではそのままフィリピンや中国南部に進むことが多いです。

 しかし、7月以降の台風は、北緯25度付近(宮古島から沖縄本島付近)より北に進むと、進路を北から北東に変え、日本列島に接近し、上陸することも多くなります。

 特に、9月は九州や四国・本州の太平洋岸を直撃するようなルートをとることが多く、室戸台風や伊勢湾台風など、過去に大災害を起こした台風も、ほぼすべてが9月に上陸しています。

台風の強さと大きさ

 中心気圧(ヘクトパスカル)が小さいほど、強い台風だというのは、間違いではありませんが、気象庁では台風の強さと大きさを表すルールを決めています。

 台風の強さは、中心気圧ではなく、中心付近の最大風速の強さで表します。

 そもそも台風とは、最大風速17m/s以上の熱帯低気圧のことなので、台風と呼ばれていること自体が「強い熱帯低気圧」という意味だと考えるといいでしょう。

 台風の強さについては、下の表をご覧ください。

名称強さ最大風速
熱帯低気圧17m/s未満
台風(強さなし)17m/s以上33m/s未満
強い33m/s以上44m/s未満
非常に強い44m/s以上54m/s未満
猛烈な54m/s以上
台風・熱帯低気圧の強さと最大風速

 続いて台風の大きさですが、台風の強風域(風速15m/sの風が吹くか、吹く可能性のある範囲)の半径で表します。

台風の大きさ強風域の半径
(大きさなし)500km未満
大型500km以上800km未満
超大型800km以上
台風の大きさと強風域の半径

 「大型で非常に強い台風〇号」(最大風速は33~44m/sm、強風域の半径は500~800km)、

 「大型の台風×号」(最大風速は33m/s未満)、

 「強い台風△号」(強風域の半径は500km未満)、

などと表記されます。

 なお、弱い台風や小型の台風といういい方はしないので、ご注意ください。

日本に接近後の台風はどうなるか

 台風は、中緯度付近に達すると、徐々に中心気圧が上がり、台風の目も崩れてきます。

 これは、台風を発達させるエネルギーである海水温が、日本に近づくにつれて下がってくること、上陸することで海面からの水蒸気の供給が断たれることなどが原因です。

 また、上陸すると、海面より摩擦が大きいため、雲の渦ができにくくなるのも原因といわれています。

 しかしながら、台風の形が崩れてきても、台風の強風の範囲がかえって広がることもあり、台風が弱ってきたからといって警戒を緩めるのは好ましくありません。

普通の低気圧になる台風

 台風が北上し、日本付近で寒気の影響を受けると、台風は同心円状の渦巻きの構造から、前線を伴うような温帯低気圧の形状に変化してきます。

 これは、台風域内の暖かい空気が日本周辺の冷たい空気と混ざることで、空気のぶつかるところに前線ができ、温帯低気圧へと変貌するからです。

 このような場合には、温帯低気圧になって徐々に弱まっていくのが普通ですが、時に温帯低気圧として勢いを増すことがあります。

 勢いを増した温帯低気圧は、台風の時と異なり、中心から遠く離れたところでも、強風をもたらすことがありますので、注意が必要です。

 ときどき台風が衰弱して、弱い熱帯低気圧になることもあります。

 これは、熱帯低気圧の性質を持ったまま、風速が17m/sより弱くなったもので、引き続き雨については警戒が必要なことが多いです。

 いずれにしても、台風が弱くなって、ただの低気圧になったからといって、油断せずに対応することが大切です。

台風と海水温

 最後に、台風と海水温について、触れておきたいと思います。

 台風の発生する北緯10~20度付近では、海水温が26℃以上になると台風が発生するといわれていますが、様々な条件が必要であり、海水温が高いだけでは台風はできないようです。

 ただ、いずれにしろ、昨今の気象変動で、日本付近の海水温が高まってきており、2022年の台風15号のように、日本のすぐ近海で台風ができることも今後増えるかもしれません。

 先に述べたように、高い海水温による水蒸気の上昇が台風のエネルギーの源泉であり、海水温が高い海域では、台風は発達を続けます。

 緯度が上がって日本周辺に来ても、昨今は東シナ海や太平洋の海水温が高いこともあり、台風がなかなか衰えない要因の一つといわれています。

 一方、台風が海上を通過すると、その巻き起こす風や波によって、海水がかき回され、海水温が下がるということが起こります。

 一つ目の台風が海上を通過し、二つ目の台風が同じような経路を通ると、一つ目の台風が海水をかきまぜて海水温を下げたおかげで、二つ目の台風はあまり発達しないという事例がこれまでもありました。

 ご参考になれば幸いです。

まとめ

 台風について、農家さんや農業技術者の皆さんに知っておいてほしい知識をまとめました。

 台風は非常に特徴的な気象現象で、様々な視点から研究されており、奥が深いのですが、今回は必要最小限にさらっとまとめています。

 なお、台風の予報を防災に活かす方法についてはこちらを、農業分野でのハウスの風対策(こちら)、大雨対策(こちら)もまとめてありますので、それぞれのリンクをご覧ください。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました