6月に入るといよいよ梅雨(つゆ)です。
関西の平年の梅雨入りは6月6日頃です。
大阪では、年間雨量の30%弱が6月と7月に降っています。
うっとうしいけれども、農業にとっては、水の恵みをもたらしてくれる大事な季節です。
なぜ梅雨になるのか、梅雨前線はどのような前線か、解説します。
梅雨前線の天気図
天気図を見てみましょう。
これは、2023年6月2日21時の天気図です。
この年は梅雨入りが早く、大阪を含む近畿地方では5月29日に梅雨入りしました。
梅雨入り以降は、ぐずついた天気が続いた後、南海上から台風2号が西日本に接近してきたところです。
三陸沖に低気圧があって、低気圧から伸びる寒冷前線が、途中から温暖前線と寒冷前線が重なったような前線にかわっています。
これは動きが遅いことから停滞前線と呼ばれていて、梅雨に多く見られることから、梅雨前線とも呼ばれます。
前線についての詳しい解説はこちらから。
梅雨前線のでき方
梅雨前線は、6月~7月にかけて日本列島付近に現れます。
梅雨期の停滞前線は、大平洋~東日本と、西日本~東シナ海で、でき方が違うといわれています。
東日本の停滞前線では、オホーツク海から吹く冷たい風と、小笠原付近から吹く暖かい風がぶつかり、ラグビーのスクラムのように押し合っています。
押し合いで行き場を失った空気は、上昇気流となって雲を作り、雨を降らせます。
一方西日本や東シナ海においては、北からの空気と南西からの空気では、それほど温度差があるわけではありません。
ただ、南西からの空気は海上を通ってくることから水を多く含む(相当温位が高い)空気であり、北からの比較的水分の少ない(相当温位が低い)空気とは、性質が異なります。
こうした性質の異なる空気どおしがぶつかると、やはり前線ができて、特に南西の湿った空気が上昇気流となって雨をもたらせます。
梅雨に雨が多いのは、動きの遅い停滞前線で次々と雨雲ができるため、同じ場所で長時間、雨が降り続けるからなのです。
下層ジェットとは
気象の世界でよく使う言葉に、ジェット気流というのがあります。
ジェット気流とは、対流圏上部(普通地上10kmあたり)に吹いている強い風のことで、中緯度(日本あたりの緯度)の上空を地球をぐるっと回るように吹いています。
これに対して、下層ジェットというのは、それよりもずっと低い750hPa~850hpaあたり(地上1500m~2500mあたり)を吹いています。
梅雨時、特に西日本では、南西方向からこの下層ジェットが梅雨前線めがけて吹き込み、集中豪雨の一因となることがあります。
また、水稲に大きな被害をもたらすトビイロウンカがこの下層ジェットに乗って飛来する(正確には風で吹き飛ばされてくるというべきか)ことは知られており、ウンカの発生予察には、下層ジェットの観測が重要であることがわかっています。(詳しくはこちら)
梅雨の後半は大雨に警戒を
さて、梅雨入り後しばらくは、晴れたり、雨が降ったりといったはっきりしない天気が続くことが多いです。
2023年は、梅雨入りから1週間たたないうちに6月の雨量としては過去最大を各地で記録する大雨となりましたが、これは接近する台風の外側を回る暖湿気が流入したことによる影響が大きいと考えられます(気象庁からの正確な分析は、6月11日現在まだ出ていません)。
一般的には、6月中はそれほど激しい雨にならず、しとしと、じめじめといった状況が続きますが、7月に入ると、南の風が優勢になってきます。
7月の湿った暖かい太平洋からの風、また下層ジェットによって運ばれる南西からの湿った風が、冷たい風とぶつかると、時に次から次へと雲を作り、同じところに集中豪雨を降らせることがあります。
雲が線状に並ぶので、線状降水帯と呼んでいます。
線状降水帯については、項を改めて解説しますが、近年の集中豪雨の多くが、この線状降水帯によるものといわれています。
北部豪雨や西日本豪雨など、7月に西日本に大きな被害を与えた豪雨は、この線状降水帯によるものが多く、警戒が必要です。
梅雨明けでいよいよ夏本番
夏の太平洋高気圧が大きく張り出すと、梅雨前線は北上し、梅雨が明けます。大阪の平年の梅雨明けは、7月19日頃です。
梅雨明け十日といって、梅雨明け後10日間ぐらいは天気が安定し、夏の厳しい暑さとなります。農作業では、水田の中干しに適した時期となります。
一方、熱中症が急増するのもこのころで、野外の作業には注意が必要です。
熱中症については、こちらもご覧ください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。