防災のために前線を知ろう

スポンサーリンク
天気図
この記事は約6分で読めます。
スポンサーリンク

 天気図には等圧線や高気圧、低気圧のほかに、前線というものが書かれています。

 前線の近くでは天気が悪いということは、誰でも何となく知っていることですが、なぜ前線の近くで雨が降るのかを説明できる人は少ないのでは。

 この記事では、前線の種類とその性質、防災上の注意点などをわかりやすく解説します。

天気図で前線を見てみよう

3種類の前線が表示された天気図
2022年11月2日の予想天気図(気象庁) 3種類の前線

 上の図はある日の予想天気図です。

 サハリンの西に低気圧があって、低気圧から、半円が上向きにくっつく赤い線と、くさび形が下向きにくっつく線がのびています。

 この半円付きの赤い線が温暖前線、くさび形付きの青い線が寒冷前線です。

 また、天気図の下側の太平洋にも低気圧があって、温暖前線が東へ、寒冷前線が西へ延びていますが、寒冷前線の先(四国の南あたり)には、温暖前線の記号と寒冷前線の記号が交互に書かれた記号が続いています。

 これを停滞前線といいます。

 この図にはない閉塞前線と併せて、天気図には4種類の前線が描かれているのです。

前線では何が起きているのか

 それでは、前線では何が起きているのでしょうか。

 前線では冷たい空気と乾いた空気、湿った空気と乾いた空気など、性質の異なる空気がぶつかっています。

 天気図に描かれている前線は、地上部分のみを描いているので、線になっています。

 ですが、空気どおしがぶつかっているので、実際の前線は地上から上空に向かって面を作っており、これを前線面といいます。

 前線面では、暖かい空気は軽いので上へ浮き、冷たい空気は重いので下に沈むことによって、上昇気流が起こり、雲ができ雨を降らせることになるのです。

前線の種類と特徴を知ろう

前線が表示された天気図
2022年11月2日の予想天気図(気象庁) 3種類の前線

温暖前線はしとしと長時間の雨

 温暖前線は、主に南方向から吹く暖かい風が、冷たい空気の上に、乗り上がろうとする場合にできる前線です。

 暖かい空気は冷たい空気より軽いので、冷たい空気にぶつかると上に乗り上げて、じわじわ上昇を続けます。

 上空に行くにつれて、気温が低くなり、水蒸気が凝結して水滴や氷の粒になり、雲となって雨を降らせます。

 暖かい空気が緩やかに上昇するので、層状の雲(高層雲や乱層雲)をつくります。

 そのため、寒冷前線に比べると時間雨量は少ないですが、長時間降ることが多いです。

 前線に描かれている半円形は、暖気の進む方向=前線の進む方向を表しており、半円のある側に進みます。

寒冷前線は天気の大きな変化に注意

 寒冷前線は、主に北方向から吹く冷たい風が、暖かい空気の下に潜り込もうとする場合にできる前線です。

 暖かい空気は冷たい空気より軽いので、冷たい空気に押されることで急激に上昇します。

 この上昇気流が冷やされ雲になるのは温暖前線と同じですが、暖気が急上昇するので、できる雲は積雲や積乱雲と行った団塊状の雲となります。

 こうした雲による雨は、継続する時間は短いのですが、短い時間に多くの雨量をもたらす「短時間強雨」となることが多いです。

 特に積乱雲は、一時的な強雨、突風や雷だけでなく、ひょう、竜巻といった激しい気象現象を伴うことがあるため、防災上注意が必要です。

 また、地上付近を寒冷前線が通過すると、風向きが南寄りから北寄りに急激に変化し、気温が急激に下降することもあります。

 寒冷前線のくさび形は、寒気の動く方向(=前線の進む方向)を表しており、くさび形のとがった方へ前線は動きます。

温暖前線は東側、寒冷前線は西側

 低気圧は反時計回りの渦巻きになっている(低気圧の解説はこちら)ので、南からの風は東側から、北からの風は西側から吹き込みます。

 従って、暖気が吹き込む温暖前線は低気圧の東側(右側)に、寒気が吹き込む寒冷前線は低気圧の西側(左側)にできます。

 普通、寒冷前線は温暖前線より速く動くため、寒冷前線は低気圧から西側→南側→東側へと反時計回りに進んでいきます。

 下図では、太平洋の低気圧の寒冷前線は低気圧の西側に伸びていますが、サハリンの低気圧では南東方向に伸びているのがわかります。

3種類の前線が表示された天気図
2022年11月2日の予想天気図(気象庁) 3種類の前線

停滞前線は集中豪雨に要注意

 上図の沖縄本島の南に描かれている前線が、停滞前線です。

 停滞前線は、寒気と暖気、乾いた空気と湿った空気がぶつかり合って、押し合っている状況と考えてもらうとわかりやすいです。

 冷たい空気と暖かい空気が「がっぷり四つ」にぶつかっているので、寒冷前線と温暖前線が重なったような記号になっていると覚えてください。

 空気はがっぷり四つになって逃げ道がなくなり、ぶつかった空気はやはり上昇気流となります。

 停滞前線は名前の通り、南北方向にあまり移動せず、次々と雨雲をもたらすことから、降り始めからの雨量が多くなりやすいです。

 また、台風や低気圧、気圧配置などの影響を受け、集中豪雨の災害をもたらすことから、最も警戒が必要な気象現象の一つです。

 停滞前線が6~7月にできると「梅雨前線(ばいうぜんせん)」、9月頃にできると「秋雨前線(あきさめぜんせん)」といい、天気予報などではこちらを使っているようです。

閉塞前線は低気圧の最盛期

閉塞前線説明用の閉塞前の天気図
2022年11月13日21時の天気図(気象庁) 閉塞前

 まずは上図を見てください。

 日本付近に2つの低気圧がありますが、北側の低気圧と寒冷前線に着目してください。

閉塞前線説明用の閉塞後の天気図
2022年11月14日21時の天気図(気象庁) 閉塞前線のある天気図

 24時間後の天気図です。

 先ほどの低気圧はカムチャッカ半島の南に移動して、寒冷前線は温暖前線と一体化していますね。

 寒冷前線のほうが温暖前線より速く動くため、温暖前線に追いついてしまったのです。

 このように追いついた寒冷前線(=追いつかれた温暖前線)のこと閉塞前線といいます。

 閉塞前線は低気圧の最盛期にできるもので、低気圧本体は徐々に衰えるか、閉塞点(=温暖前線と寒冷前線の分かれるところ)を中心とした別の低気圧ができるか、いずれかになります。

まとめ

 前線の種類とその性質、防災上の注意点などを解説しました。

 前線には4種類あること、性質の違う空気がぶつかり合っていること、雨を降らせること、防災上重要であること、以上がポイントです。

 天気図全般や高気圧、低気圧については、こちらをご覧ください。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました